小説第一弾は夜伽×大鎌です。
興味のある方はどうぞ。
最初に会った時分から気に入らなかった。
あんたは当たり前のようにあの方の隣に座し、あの方もそれを当たり前のように許す。
肌蹴た着物を優雅に纏い、艶事をささやかれ、慈しみの目を向けられる。
あたしが望んでやまない形で愛されるあんたなんか、死んでしまえばいいのに。
*
「あら、由美じゃない。一人で何してるのよ?とうとう志々雄様に愛想をつかされたのかしら?」
久しぶりの京をを散策していると、いつもより大人しめの着物を身に着けた由美を見つけた。
迷わず声をかける。辺りを見回すが、志々雄や宗次郎の姿はおろか、護衛の姿も見えない。
「あら、ご期待に添えず申し訳ないけれど、夜伽の役はまだ譲る気は無くてよ。」
挑戦的な口調で由美は答え、笑みを浮かべた。
元は花魁であったという由美は年を重ねてもその容色が衰えることなく、匂い立つような色香で道行く男共を何度も立ち止まらせる。
ま、確かに外面はいいのよね。
自分の美貌を自覚している鎌足も由美の美貌には一目置いている。
自分には無い、「女」としてのたおやかさを由美は持っているのだ。
だからこそ、妬み、羨む。
努力しても、「女」の身体を持たない自分では、由美には勝てない。
「ほんっと、あんたを殺してやりたいわ・・・」
自嘲気味に呟けば、由美はただ肩をすくめた。しばらく沈黙が続く。
「おい、姐ちゃん達。俺たちと一緒に呑まないかい?」
その沈黙に割り込んだのは下卑た男達の声。
まだ昼だというのに、酒の匂いが立ち込める。
「・・・はぁ。」
帝のおわす京と雖も、下衆は存在するのだ。
鎌足はどうやって追い払うか思案した。
あたしの大鎌で追い払うのが一番手っ取り早いんだけど・・・
逃げ切る自信はある。
しかし、隣には由美も居り、由美を連れて逃げるにはいささか骨が折れる。
ここは何とか事を荒立てずにいこう。
「う~ん、呑みたいのは山々なんだけど~、あたし達急ぎの用があるのよねぇ。残念だけど、また今度。」
にっこりとしなを作り、由美の手を引いて男達から足早に離れる。
由美もまた鎌足にされるがままに、歩を速めた。
しばらく歩くと、町の賑わいとは随分離れてしまった。
「・・・鎌足、もう手を離しても大丈夫よ?」
由美の言葉で初めて握ったままの手に気づいた。
「・・・ふん、感謝しなさいよ?あんたがぼけーっと立っているから、ああいう輩に引っ掛かるのよ!大体、護衛はどうしたのよ?志々雄様があんた一人で行かせる訳ないじゃない?」
手を握っていたのが照れくさくて、由美に文句をまくし立てた。
「たまには一人になりたい時もあるでしょう?外の空気を吸いたくなったのよ。」
一人になりたいなんて贅沢な悩み。
四六時中志々雄様と一緒にいられるあんたがやっぱり嫌い。
いつも考える。いっそその細い頸を鎌で切ってしまえば、どんなに胸が空くだろう。
だけど、想像の中の自分は由美を殺した後に泣くのだ。何度殺しても、その度に自分は泣き叫ぶ。
何故なのだろう?憎い憎い恋敵なのに・・・
「いたぞ!」
耳障りな声に振り向けば、先ほど町で声をかけてきた男達。
「逃げるこたぁ無ぇだろう?ふん、近くで見れば益々上玉じゃねぇか。俺たちと遊ぼうぜ?」
一人の男が由美の肩を抱き寄せる。由美の眉がしかめられるのを見た瞬間に鎌足の大鎌が舞った。
ごろん、と由美の肩を抱いていた男の首が落ちる。
「せっかく見逃してあげたのに、死にに来るなんて馬鹿な男。」
仲間の男の首を唖然と見ていた男達が、一人、また一人と逃げ出してゆく。
「逃がさないわよ?さぁ、遊びましょう。」
一つ、また一つ首が舞い、あっという間に辺りは血の海と化した。
「ふん、早く帰った方がよさそうね。由美、着物を汚して悪かったわね?」
首の無い体を踏みつけていた足をどかし、由美の方へ振り返る。
由美の着物は男達の血で、朱色に染まっていた。
「あら、これはこれで素敵じゃない?地味な着物が私好みになったわ。」
血まみれの着物を見ながら、由美は微笑む。
「何笑ってるのよ、気味の悪い女ねぇ。さ、早く行くわよ。」
血をみながら、笑えるのはさすが志々雄様が選んだ女、ということか。
「鎌足」
「何よ?」
「ありがとう。」
そう言って微笑む由美の顔を見て、鎌足は嫌なことを思いついた。
「あんたが嫌いな理由がわかったわ・・・」
憎い憎い恋敵・・・
憎んで、妬んで、恨んで・・・・・・
死んでしまえばいい、殺してしまおうか、何度も夢想する。
それでも、女が死ねば自分は泣く。
何故?
男が由美の肩に触れた時の言いようのない不快感。
何故?
憎んで、妬んで、恨んで・・・・・・
それでも自分は女に焦がれるのだ。
あの方に愛される女を、あの方を自分と同じ想いで愛する女を。
あの方に自分が愛されることはない。女に自分が愛されることもない。
自分の恋心はどちらにしろ報われず・・・
もう一つの恋心を女に告げることは無い。
女の一番になることなどあり得ない。
「由美、護衛が嫌なら今度からあたしを連れて行きなさい。あたしの可愛さの前では、あんたに声かける男なんかいないわ。」
「嫌味ね。まぁ、がちがちに護られるよりは、嫌味女の方がましかもね。」
「言ったわね!」
あたしはあんたの一番にはなれない。
「恋敵」の位置に甘んじておくわ。
大嫌いな女。
愛しい女。
死んじゃえばいい女。
死なせたくはない女。
あたしのたった一人の「恋敵」
***
〈後書き)
意味不明ですみません・・・鎌足と由美さんの掛け合いが大好きで、アニメではにやにやしながら見ていた記憶があります。(気持ち悪い子供・・・)鎌足の一人称って何でしたっけ?書きながら、突っ込みどころが満載でした。間違いなどがありましたら、ご指摘頂けたらなぁ、と思います。志々雄*由美さんは基本としても、鎌足*由美、宗二朗*由美とかも好きです。とにかく、由美さんは志々雄一派で愛されていたと希望します。また違うCPも開拓してゆきたいです。読んでくださり、ありがとうございました!
[17回]
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